軍もの(ミリタリー)の古着を買い取るとき、「実物ですか、レプリカですか」と聞かれることがあります。気持ちは分かります。実物のほうが高い、という前提があるからです。
ですが、当社が2026年9月11日に買い取った軍もの5着では、いちばん高い金額がついたのは、軍の契約番号が入っていない1着でした。ドイツのメーカーが自社ブランドで作っている、民生ラインの1着です。
この記事では、その5着の実際の金額を並べて、軍もの衣類の値段が何で決まっているのかを説明します。タグの読み方も、当社の品物に写っているものだけを材料に書きます。結論を先に書くと、ご自分で見分けていただく必要はありません。
軍もの衣類の値段は、何で決まるのですか?
当社は、その型を探している方がどれだけいるかを見て付けています。軍に納入された品かどうかを基準にしてはいません。
当社の査定基準は「ブランド → アイテム → 年代 → 状態」の順で見ると書いています。軍ものの場合、この「アイテム」と「年代」のところに、その型を探している人が今どれだけいるか、という判断が入ります。数が少なくても探している人がいなければ金額は伸びませんし、数が出回っていても指名で探されている型なら金額はつきます。
同じ状態なのに、なぜ金額が違うのですか?
状態は、金額を決める最後の要素だからです。次の5着は、状態ランクがすべて同じ「B」です。それでも金額は6,000円から10,000円まで分かれました。
| お品物 | 買取価格 | 状態ランク |
|---|---|---|
| MIL-TEC ドイツ軍タイプ フィールドジャケット | 10,000円 | B |
| フランス軍 M-64 フィールドパーカー カーキ | 9,000円 | B |
| 米軍 US NAVY ピーコート ウール ネイビー | 9,000円 | B |
| 米軍 ECWCS Gen1 パーカー ウッドランド | 6,000円 | B |
| スウェーデン軍 M59 ウールジャケット グリーン | 6,000円 | B |
いずれも2026年9月11日に当社が実際に買い取った金額です。同じ型でも状態・付属品・そのときの市場によって金額は変わります。この金額での買取をお約束するものではありません。
状態が揃っているので、この4,000円の差は状態が作ったものではありません。5点という数で法則を示せるものではありませんし、素材も年代も現行かどうかもバラバラです。ただ少なくとも、「軍に納入された実物かどうか」で並んではいないということは言えます。
いちばん高かったのは、軍の契約番号が入っていた1着ですか?
5着のうち最も高い10,000円がついたのは、MIL-TEC のフィールドジャケットです。ブランドタグに「MIL-TEC by Sturm」とあり、軍の契約番号は入っていませんでした。当社は民生ラインの製品として取り扱いました。
一方で、内タグに米軍の契約番号が入っていた ECWCS Gen1 パーカーは6,000円、スウェーデン軍のステンシルが入っていた m/59 ウールジャケットも6,000円でした。「軍に納入された実物だから高い」という順番にはなっていません。
MIL-TEC とは何ですか?
ドイツの Sturm Handels GmbH が自社ブランドとして展開しているものです。
Sturm 社は1971年にドイツのロッテンブルク・アム・ネッカーで創業した会社で、軍の放出品を仕分けて民間市場に流すところから始まっています。1995年に自社ブランドとして MIL-TEC を立ち上げ、現在はアウトドア・タクティカル用の衣類を作っています。
つまり MIL-TEC は、他社のブランドを名乗った品ではなく、Sturm 社が自社の名前で販売している製品です。ここは誤解が多いところなので、書いておきます。当社はこの1着をお買い受けの対象としました。
タグの契約番号からは、何が分かりますか?
契約が結ばれた時期の手がかりが分かります。製造年ではありません。
当社が買い取った米軍 ECWCS Gen1 パーカーの内タグには、DLA100-92-C-4204 という番号が入っていました。1967会計年度以降の米国防総省の契約番号は 調達機関コード - 会計年度 - 文書タイプ - 連番 という形で統一されています。この番号なら、
- DLA100:国防兵站局(DLA)の国防人事支援センター(DPSC・フィラデルフィア)、被服・繊維部門
- 92:会計年度1992(米国の会計年度は10月始まり)
- C:通常の契約
- 4204:連番
という読み方になります。同じタグに製造元として Alpha Industries の名前も入っていました。
この読み方が使えるのは、1967会計年度以降に調達された米軍の品だけです。それ以前の品、他国の軍の品、タグが欠けている品には当てはまりません。
ここで大事なのは、この番号が指しているのは契約が結ばれた年度であって、その1着が縫われた年ではないということです。生産は契約のあと数か月から、長いときは数年にわたって行われます。年代を「だいたいこのあたり」と絞る材料にはなりますが、製造年の証明にはなりません。
国によって、タグの書き方は違いますか?
違います。米軍のような契約番号を使わない国もあります。
当社が同じ日に買い取った4着では、それぞれ書き方が違いました。
- フランス軍 M-64 フィールドパーカー:内タグに契約業者名 WAREIN FLERS(フレールは仏北西部の町)と、1985 という年、サイズ表記 108C。米軍と違って年が直接読めますが、これも契約や納入の年であって、縫製された年そのものとは限りません
- 米軍 US NAVY ピーコート:内タグに NAVAL UNIFORM SHOP(ブルックリン)。前の持ち主の氏名が手書きされていたため、掲載写真ではその部分を塗りつぶしています
- スウェーデン軍 m/59 ウールジャケット:タグではなく内側に直接ステンシルで印字。経年で薄くなっていました
- MIL-TEC:ブランドタグに MIL-TEC by Sturm とサイズ表記。軍の契約番号はありません(納入品ではないため)
年代の見方については、洗濯表示から絞る方法を古着のタグで年代を見分ける方法にまとめています。日本国内で売られた衣類なら、そちらのほうが確実です。
自分で見分けたほうがいいですか?
いいえ。見分けずに、そのままお出しください。理由は3つあります。
1. 見分けても、金額は変わらないから
この記事の最初に見たとおり、当社が付けた金額は「軍に納入された品かどうか」の順番になっていませんでした。見分けた結果が金額の順番に反映されないなら、お客様が時間をかける意味がありません。
2. 「番号がなければ民間品」は成り立たないから
契約番号を使った判別法は中古市場で広く語られていますが、そのまま当てはめると外れます。契約番号の書式は1900年代初頭から何度も変わっています。いま語られている「機関コード-年度-記号-連番」という読み方が使えるのは1967会計年度以降に調達された品だけで、それ以前の品に当てはめても読めません。タグが擦れて読めない、切り取られている、という個体も珍しくありません。
米国製かどうかで判断する方法にも同じ問題があります。米軍の調達には国産品を使うという法律(Berry Amendment, 10 U.S.C. §4862)がありますが、この法律には国内で調達できない場合などの適用除外が定められています。そして当然ながら、この法律は米軍にしか関係しません。フランス軍やスウェーデン軍の品には使えない物差しです。
3. 当社は鑑定機関ではないから
当社の買取規約第4条に書いているとおり、当社は鑑定機関ではなく、お品物の真贋を証明・保証するものではありません。判断がつかないお品物は、その旨をお伝えし、お買い受けをお見送りする場合があります。その立場の会社が「これを見れば分かります」という手順書を出すのは、筋が通りません。この記事でタグの話をしているのは、当社が買い取った品に実際に何が書いてあったかを紹介するためで、お客様に判定していただくためではありません。
軍もので、値段がつかないものはありますか?
状態ではなく、においでお断りすることがあります。
香水・煙草・カビの強いにおいがついたものは、洗濯やクリーニングでは取り切れず、次の持ち主にお渡しできないため、状態にかかわらずお受けできません。破れ・ほつれ・染みは減額の対象にはなりますが、それだけで買取をお断りすることはあまりありません。詳しくは査定基準に書いています。
値付けの対象にならなかったお品物は、無料でまとめてお引き取りします。処分にお困りになることはありません。
よくあるご質問
Q. レプリカだと分かっているものでも、見てもらえますか?
A. はい。この記事のとおり、民間向けに作られた製品が最も高い金額になることがあります。ご自分で分けずに、まとめてお出しください。
Q. タグが切り取られています。値段はつきますか?
A. つくことがあります。タグは年代を絞る材料のひとつであって、値段そのものではありません。縫製やサイズ表記、生地から判断できる場合もあります。
Q. 実物かどうか、査定のときに教えてもらえますか?
A. タグや刻印に何が書かれているかはお伝えします。ただし当社は鑑定機関ではないため、真贋を証明・保証することはできません。判断がつかない場合は、その旨をお伝えし、お買い受けをお見送りする場合があります。
Q. 迷彩柄が色あせています。減額されますか?
A. 程度によります。ヴィンテージの色落ちや自然な着用感は、価値として評価することがあります。新品に近いことが常に有利とは限りません。
Q. 掲載されている金額と同じ値段で買い取ってもらえますか?
A. お約束はできません。掲載しているのは、その日にその1着を買い取った実際の金額です。同じ型でも状態・付属品・そのときの市場によって金額は変わります。
見分けずに、そのままお出しください
軍ものの古着は、実物かレプリカかという軸で語られがちです。ですが当社が実際につけた金額は、その軸の順番になっていませんでした。値段を決めているのは、その型を探している人がどれだけいるかです。
判定はこちらで行います。ご自分で分けていただく必要はありません。写真を1枚お送りいただければ、おおよその金額をお伝えします。お写真でお伝えする金額は目安で、現物を拝見して変わることがあります。査定料は無料です。
買取の方法は宅配買取(全国)・出張買取(長野県全域)・店頭買取(松本市・予約制)の3つです。申込フォームからもお送りいただけます。
この記事の出典
- 買取価格・タグの記載内容:当社が2026年9月11日に買い取ったお品物5点(買取実績に掲載)
- 契約番号(PIID)の構成規定:連邦調達規則 FAR Subpart 4.16
https://www.acquisition.gov/far/subpart-4.16 - 米軍衣類タグの書式の変遷:Omega Militaria「Reading US Military Contract Labels」
https://omegamilitaria.com/blogs/reference-guides/reading-us-military-contract-labels-a-comprehensive-visual-guide - Berry Amendment の適用除外:10 U.S.C. §4862
https://www.law.cornell.edu/uscode/text/10/4862 - Sturm Handels GmbH / MIL-TEC の沿革:Sturm MIL-TEC 公式
https://www.miltec.de/en/company/